黎明寮中期計画(令和6年度~令和9年度)
黎明寮の運営方針である「安心・安全な生活を提供し、一人ひとりが願う人生を心豊かに過ごしていけるよう支援する」ことを実現するため、国・東京都の保護施策の動向を踏まえ、必要に応じた見直しを図りながら中期計画を策定し、各年度の事業計画の中で実施していく。
1.利用者サービスの向上
利用者の日常生活・日中活動から地域移行に至るまで、利用者本人の選択と決定を尊重し、個別性に配慮した生活が実現できるよう自立支援を行う。また利用者の高齢化による高齢者施設への移行も状況に応じて対応していく。
(1)個別支援計画に基づく支援
黎明寮では現在、全救協から示された個別支援計画をもとに支援計画を策定し、利用者一人ひとりの状況に応じた個別支援を行っている。令和6年度より国において個別支援計画が制度化されることとなり、それに向け手引書による理解や実務対応に向けた研修等を行い、利用者のニーズに沿った個別支援計画を立て支援を実施し、適宜振り返りを行い自立への伴走支援を行う。併せて保護の実施機関が作成する利用者ごとの援助方針により、情報を共有し連携を強化するとともに、保護の実施機関が設ける協議体への参加も含め、多様な視点で利用者への個別支援を進めていく。
(2)日中活動の充実
黎明寮では現在、日中活動としてレクリエーション、室内軽作業、公園清掃等を、利用者からの希望により能力や特性に応じて対応している。しかしながら令和5年度までコロナ禍で外部ボランティアの活動を中止しており、専門的な技術や特技を生かしたレクリエーションが展開できなかった。令和5年5月に感染症の位置づけが5類相当感染症となったため、令和6年度から感染防止対策をとったうえで外部ボランティアの活動を再開していく。さらに利用者の健康維持を促進するため運動レクリエーションや、利用者の自主的活動を促すため利用者間の意見交換ができる「れいめいクラブ」を充実していく。
(3)虐待防止や権利擁護の推進
利用者の基本的人権を尊重し権利擁護を進めていくためには、常に支援者が意識して利用者と関わることが重要である。黎明寮では令和4年度に黎明寮管理規程を改正し、虐待防止のための措置、身体拘束の禁止の項目を追加し利用者支援に取り組むこととした。また併せて黎明寮 虐待防止・人権擁護委員会要綱を制定し、取組みの内容を明文化した。権利侵害や虐待は、常に起こりうるという認識に立ち帰り、自ら定期的に虐待防止・権利擁護のセルフチェックを行うとともに、寮内に人権擁護の標語を掲げ権利擁護や人権意識の啓発に努める。また定期的に権利擁護や虐待防止に関する研修を開催し虐待・権利侵害の根絶を図る。
(4)高齢者施設等への移行支援の対応
黎明寮は入所者の平均年齢が62歳と高齢化しており、併せて精神障害や基礎疾患がある利用者が多く、利用者の高齢化や重度化が課題となっている。施設での日常生活はある程度の自立が必要であり、支援が困難となってきた場合は本人の意向を尊重しながら、本人に適した移行先を検討していく。高齢者施設への移行には介護保険の認定が必要となるが、行政機関と調整し、よりふさわしい生活環境が提供できるよう他施設への移行支援を進めていく。
2.地域生活移行・地域定着支援の促進
利用者の「自己選択・自己決定」を最大限に尊重しながら地域生活移行訓練を行う。また地域の社会資源を活用し、居宅生活訓練や通所事業を通して地域生活移行・地域定着支援を推進していく。
(1)地域生活への移行支援
救護施設は入所施設であるが終の棲家とせず、日常生活が自立し生活意欲がある利用者には、本人の意向を尊重しながら積極的に地域移行を促していく。入所者は地域での生活をイメージしながら借上げアパートでの体験宿泊を重ね、一人暮らしの見通しが可能となったら1~2年の居宅生活訓練に移行する。その間、様々な社会資源の活用を前提に食事や服薬・通院など一人暮らしのノウハウを身につける支援を行い、訓練終了後実施機関と調整の上、退寮して地域での一人暮らしへと繋げ地域移行を実現していく。なお平成6年度から個別支援計画をもとに地域移行した場合は措置費の加算対象となる。
(2)地域移行後の定着支援
退寮して地域移行した利用者への支援は、引続き保護施設通所事業として利用者の通所・訪問支援を行っていく。利用者がスムーズなひとり暮らしを維持していくためには、黎明寮の食事サービスを始め、服薬・金銭管理指導、病院・行政機関への付添いなど通所事業として必要に応じ対応し、利用者の定着支援に繋げていく。また社会資源として訪問看護や訪問介護、権利擁護センター、通所作業所等との連携を図り、豊かな生活が維持できるよう伴走支援を行う。
(3)生活困窮者への自立支援による社会貢献
黎明寮退寮者以外の地域の生活困窮者についても、保護施設通所事業を適用して退寮者と同様に地域での定着支援を進めていく。なお令和6年度より通所事業の定員割合が、退寮者と地域の生活困窮者とで5割ずつに改正され、地域の生活困窮者の割合が増えたため、地域の生活困窮者への定着支援がしやすくなり、施設としての社会貢献が一層進むことになる。また一時的に在宅生活が困難となった地域の生活困窮者に対しては、一時入所事業として課題解消までの間、施設での受入れを積極的に行っていく。
3.利用者の安心・安全の確保
利用者へのきめ細かな健康管理、通院・服薬支援、また日常生活における事故防止、さらに施設内の居住環境整備を行なっていく。また地震や火災などへの防災対策や、感染症や食中毒への防止対策を法人・地域と連携し実効性あるものにしていく。
(1)利用者の健康管理や危険防止への対応
利用者への健康管理として年2回の健康診断を行い、指導が必要な利用者には診療医から直接指導を行う。また危険防止については令和5年度に黎明寮 事故防止基本方針を改定し、危機管理委員会を中心に事故を未然に防ぐための改善や発生した場合の対応について、定期的に研修や訓練を実施していく。特に事故・ヒヤリハットとして発生の多い転倒、誤薬、誤嚥、離設等への対処については、日常支援の中で未然防止のノウハウを共有し常に利用者への注意を意識して発生を抑える。特に夜間の見守り強化や服薬時の利用者との確認行為の徹底、また歯科訪問診療のさらなる活用など対応を図っていく。
(2)快適な住環境の確保
黎明寮では平成3年度に大規模修繕工事を行い、トイレ・洗面所のリニューアル、利用者居室エアコンの入替え、居室入口ドアの吊り戸への変更、食堂の改修など快適な住環境への対応を図った。今後は食堂の椅子・テーブルの更新、風呂場の改修、居室・面談室等の内装改修等が必要となっている。厳しい財政状況ではあるが、補助金等の活用も視野に入れ計画的な対応を図っていく。
(3)災害への備えの確保
黎明寮では令和5年度に黎明寮 自然災害発生時業務継続計画(BCP)を策定し運用を開始した。災害発生時にスムーズに行動に移せるよう時系列で対処方法を示し、令和6年度より平常時において発生時に備えた研修や訓練を実施していく。
(4)感染症防止対策の推進
黎明寮では令和5年度に黎明寮 新型コロナウイルス等感染症発生時業務継続計画(BCP)を策定し運用を開始した。業務を未発生期から感染期までの4つのステージに時系列で分類し、発症前の予防や準備、発生時の役割分担や対応手順を示し、令和6年度より未発生期において発生時に備えた研修や訓練を実施していく。
4.施設の管理運営の推進
施設の更新から30年以上が経過し、令和3年に実施した大規模修繕工事で衛生環境や空調関係は改善した。今後は居室・浴室の改善、日中活動フロアの改善、また老朽化した建物の維持管理器機等の更新に対応していく。また事務処理の効率化やシステム更新時の見直しを検討していく。
(1)計画修繕の実施
施設の大規模修繕や中規模修繕は多額の費用を必要とするため、国や東京都の補助金等を活用し福祉医療機構からの借入れも視野に入れ、収支状況や積立金の状況を勘案し慎重に検討を進めていく必要がある。今後想定されるものとしては、耐用年数を迎えた厨房機器や建物維持管理器機の更新、2~3階居室等の内装修繕、自家発電設備の設置、エレベーターの更新などがあげられる。施設の更新も視野に入れ、優先順位をつけながら検討し対応していく。
(2)事務処理の効率化
事務処理の効率化については、各種マニュアルの更新や活用の徹底、文書管理での保存の基準や運用の検討、また電子データの管理基準や運用方法の検討などがあげられるが、先ず現状の事務管理の見直しからの検討が必要である。また人事、財務、契約システム等の維持管理や見直し・更新については、委託業者や法人本部との調整が必要であり、課題を抽出した上で他施設も含め法人全体で検討していく必要がある。